タレパン加工とは?仕組みやメリット、レーザー加工との違いを解説 | 株式会社タキオンワタナベ

コラム

タレパン加工とは?仕組みやメリット、レーザー加工との違いを解説

2025年10月1日

タレパン加工は、穴あけや切り抜きを効率的に行える技術として、自動車産業から建築業界まで幅広く活用されています。

本記事では、タレパン加工の基本的な仕組みから実際のメリット・デメリット、さらにレーザー加工との違いまで詳しく解説していきます。

タレパンとは?

タレパンとは?

タレパン加工について理解するために、まずタレパンの基本的な定義と仕組みを見ていきましょう。駆動方式や種類、レーザー加工との違いについても詳しく説明します。

タレットパンチプレスの略

タレパンとは「タレットパンチプレス」の略称で、金属板を打ち抜いて穴を開けたり、切り抜いたりする加工方法を指します。一般的なプレス加工と異なり、タレット(回転台)に複数の金型を設置し、加工内容に応じて自動的に金型を切り替えて作業を行います。

仕組み

タレパン加工の仕組みは、事務用品の穴あけパンチと基本的に同じ原理です。上側に設置されたパンチ(上型)と下側のダイ(下型)の間に金属板を挟み、上から圧力をかけて材料を打ち抜きます。

タレットと呼ばれる回転式の金型ホルダーには、丸型や四角型など様々な形状の金型が配置されています。加工したい形状に合わせてタレットが回転し、適切な金型が選択される仕組みです。

現代のタレパン加工機は数値制御技術を採用しており、プログラムに従って自動的に加工位置や金型選択を行います。作業者は事前にプログラムを設定するだけで、複雑な加工パターンも正確に実行できます。

主な駆動方式

タレパン加工機の駆動方式は、パンチを動かすためのエネルギー源によって分類されます。

駆動方式 動力源 特徴
機械式 フライホイール 高い打撃力、振動・騒音あり
油圧式 油圧ポンプ 速度調整可能、静音性良好
サーボモーター式 サーボモーター 精密制御、環境配慮型

 

油圧式

油圧式タレパンは、油圧ポンプから供給される圧力でストライカー(駆動機構)を動かします。油圧バルブの調整によって加工速度を細かく制御でき、振動や騒音を大幅に抑制できる点が特徴です。

機械式と比較してパンチの衝撃が穏やかなため、金型の寿命も長くなります。薄板加工でバリの発生を抑えたい場合にも適している方式です。

機械式

機械式タレパンは、フライホイールの回転運動をクランク機構で上下運動に変換し、ストライカーを駆動させる方式です。強力な打撃力を発生させることができますが、振動や騒音が大きくなる欠点があります。

構造がシンプルで故障しにくく、厚めの材料でも確実に打ち抜くことができます。ただし、精密な速度制御は困難で、作業環境への配慮が必要です。

サーボモーター式

サーボモーター式は、電動サーボモーターの精密な制御によってストライカーを駆動する最新の方式です。作動油を使用しないため環境負荷が少なく、加工速度や加圧力を非常に細かく調整できます。

また、エネルギー効率が良く、複雑な加工パターンにも柔軟に対応可能です。初期投資は高くなりますが、長期的な運用コストや環境性能を重視する場合に選ばれています。

タレパンの種類

タレパン加工機は、金型の配置方法によって大きく2つのタイプに分けられます。

タレット式

タレット式は、円形のタレットに30から60種類程度の金型を配置した一般的なタイプです。豊富な金型を自動で切り替えながら、複雑で多様な加工を連続して行えます。

金型交換が自動化されているため、作業効率が非常に高く、大量生産から多品種少量生産まで幅広く対応できます。現在の主流となっている方式です。

シングル式

シングル式は、タレットを持たず上下一組の金型のみで加工を行うタイプです。構造がシンプルなため、メンテナンス性に優れ、設備投資も抑えられます。

金型交換は手動で行う必要がありますが、加工の高さを確保しやすく、タッピングや絞りなどの特殊加工にも対応可能です。小規模な生産や特殊加工に適しています。

レーザー加工との違い

タレパン加工とレーザー加工は、どちらも金属板の穴あけや切り抜きを行う技術ですが、加工原理と仕上がりに大きな違いがあります。

タレパン加工は物理的に材料を打ち抜くため、加工面にダレやバリが発生します。一方、レーザー加工は熱エネルギーで材料を溶解するため、切断面が滑らかで仕上がりが良好です。

加工可能な板厚にも差があり、タレパンは約3mm程度が限界ですが、レーザー加工では30mm前後の厚板まで対応できます。ただし、加工速度はタレパンの方が速く、アルミや銅などの反射率が高い材料では、タレパンの方が安定して加工できる場合もあります。

タレパン加工のメリットとは?

タレパン加工のメリットとは?

タレパン加工は製造業で広く採用されている理由があります。生産性、精度、コスト面での優位性について詳しく見ていきましょう。導入を検討する際に知っておきたい、タレパン加工が持つ5つの主なメリットについて詳しく解説します。

大量生産や多品種生産に向いている

タレパン加工機は数値制御システムによって自動運転が可能で、材料の自動供給装置や取り出し装置と組み合わせることで、24時間の連続生産も実現できます。一度プログラムを設定すれば、同一の精度で大量の製品を効率的に生産できるため、量産品の製造に非常に適しています。

同時に、汎用金型を使用するため専用金型の製作が不要で、プログラムを変更するだけで異なる形状の製品を製造することが可能です。試作品や小ロット生産にも迅速に対応でき、多品種少量生産の要求にも柔軟に応えられる特徴があります。

加工の精度が高い

数値制御技術により、位置決め精度は±0.1mm程度の高精度を実現可能です。人の手による作業と異なり、作業者の技量に左右されることなく、常に安定した品質の製品を製造できます。

金型の選択や材料の位置決めが自動化されているため、加工ミスの発生も大幅に削減されます。品質管理の観点からも、製品のばらつきを最小限に抑えられる優れた技術です。

運用コストがかかりにくい

タレパン加工機は一人の作業者で複数台を同時に監視・操作できるため、人件費を大幅に削減できます。自動化により夜間無人運転も可能で、生産効率の向上と労働コストの削減を同時に実現できます。

消耗品である金型も適切に管理すれば長期間使用でき、電力消費量も比較的少ないため、ランニングコストを低く抑えられるのもメリットです。レーザー加工機と比較しても、日常的な運用費用は安価です。

メンテナンスがしやすい

タレパン加工機の日常メンテナンスは、主に清掃と注油程度の簡単な作業で済みます。金型部分は定期的な研磨が必要ですが、機械本体の大掛かりな分解整備は数年に一度程度で十分です。

故障の原因となる部品が比較的少なく、トラブルが発生した場合も原因の特定と修理が容易です。メンテナンス性の良さは、設備の稼働率向上と維持費用の削減に直結します。

短時間で加工できる

適切な金型を使用した場合、一回の打撃で瞬時に穴あけや切り抜きが完了します。連続加工においても、金型交換が自動化されているため、加工時間のロスが最小限に抑えられるのがメリットです。

特に単純な形状の大量加工では、レーザー加工やその他の工法と比較して圧倒的な速度優位性を発揮します。生産性の向上と納期短縮に大きく貢献する技術です。

タレパン加工のデメリットはある?

タレパン加工のデメリットはある?

優れた特徴を持つタレパン加工ですが、いくつかの制約や課題も存在します。導入前に理解しておくべき制約や課題について詳しく解説します。

機械の導入コストがかかる

タレパン加工機は高度な精密機械のため、新品の購入には数千万円から数億円の投資が必要です。中古市場でも需要が高く、価格が下がりにくい傾向があります。

また、数値制御システムや自動化装置を含む設備全体の初期投資は相当な金額になります。投資回収期間を慎重に検討し、生産計画との整合性を確認することが重要です。

厚板の加工には不向き

タレパン加工で対応可能な板厚は、一般的に3mm程度が上限です。厚板を無理に加工しようとすると、金型や機械に過度な負荷がかかり、故障や精度低下の原因となります。

厚板の加工が必要な場合は、レーザー加工機やプラズマ加工機など、他の工法を選択する必要があります。加工対象の材料厚を事前に確認し、適切な工法を選定することが大切です。

機械が大きいためスペースを必要とする

タレパン加工機は大型のタレットや材料搬送装置を備えているため、設置には広いスペースが必要です。工場レイアウトの変更や新たな設置場所の確保が必要になる場合があります。

周辺設備との連携や作業動線の確保も考慮する必要があり、工場全体の生産フローへの影響も検討しなければなりません。設置計画は十分な検討期間を設けて進めることが推奨されます。

タレパンの主な加工方法

タレパンの主な加工方法

タレパン加工では、基本的な穴あけから複雑な形状の切り抜きまで、様々な加工方法が可能です。実際の製造現場で活用されている代表的な2つの加工技術について、特徴と用途を説明します。

追い抜き加工

追い抜き加工は、複数のパンチを連続的に使用して穴を重ねることで、四角形や変形した大きな穴を作る方法です。単一の金型では対応できない形状や、既存の金型にはないサイズの穴を効率的に加工できます。

汎用金型の組み合わせで実現するため、専用金型の製作コストや時間を大幅に削減できます。試作段階や特殊形状の加工において、非常に有効な手法です。

ニブリング加工

ニブリング加工は、丸型のパンチを使用して非常に狭いピッチで連続的に穴を開け、曲線や円弧状の切り抜きを行う方法です。汎用の丸型金型だけで、様々な曲線形状を表現できる柔軟性の高い技術です。

ただし、加工面が階段状になりやすく、仕上がりの滑らかさを求める場合は後加工が必要になります。また、金型の摩耗も激しくなるため、適切な条件設定と定期的な金型交換が重要です。

タレパン加工に関するよくある質問

タレパン加工に関するよくある質問

お客様からよく寄せられる疑問点について、実務に役立つ回答をまとめました

Q1. タレパン加工で対応できる板厚の範囲はどのくらいですか?

タレパン加工で対応可能な板厚は、一般的に3mm程度が上限となります。板厚が厚くなると金型や機械に過度な負荷がかかり、故障の原因となります。0.5mmから3mm程度の薄板から中厚板が適用範囲で、3mmを超える厚板の場合はレーザー加工機など他の工法をご提案いたします。

Q2. タレパン加工とレーザー加工はどちらを選べばよいですか?

タレパン加工は加工速度が速く大量生産に適していますが、加工面にダレやバリが発生します。レーザー加工は仕上がりが美しく厚板加工も可能ですが、加工速度が遅くコストが高くなります。アルミや銅などの反射率が高い材料では、タレパン加工の方が安定して加工できます。

Q3. タレパン加工機の金型はどのくらいの期間使用できますか?

金型の寿命は使用頻度や加工条件によって異なりますが、適切に管理すれば長期間使用できます。定期的な研磨メンテナンスにより性能を回復でき、パンチ速度の調整や適切なクリアランス設定により寿命を延ばせます。適切な管理により数年から数十年の使用も可能です。

タレパンの加工なら「タキオンワタナベ」へお問い合わせください

タレパン加工は、金属板の穴あけや切り抜きを効率的に行える優れた技術です。汎用金型の使用により多様な形状に対応でき、数値制御による高精度加工と自動化により、大量生産から多品種少量生産まで幅広いニーズに応えられます。

メンテナンス性の良さや運用コストの安さも大きな魅力ですが、厚板加工の制約や初期投資の大きさなど、考慮すべき点も存在します。レーザー加工との特性の違いを理解し、加工要件に最適な工法を選択しましょう。

タキオンワタナベでは、豊富な経験と最新設備を活用したタレパン加工サービスを提供しています。お客様の製品要件に応じた最適な加工方法をご提案し、高品質な製品を迅速にお届けいたします。タレパン加工に関するご相談は、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。

コラム監修者

渡邊 央剛
渡邊 央剛代表取締役社長
高等学校卒業程度認定試験合格後、関西外国語大学で英米語を専攻し、ニューヨーク州立大学経済学部にも在籍。
その後、同志社大学大学院ビジネス研究科で経営学を深め、現在は京都大学大学院法学研究科で法学を学ぶ。
プライム上場企業で培ったマネジメント力を活かし、経営難だった家業を再建。
一気通貫の機械サービス業の体制構築と品質・納期・コストを革新し、読者のものづくり課題に経営視点で応える。

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