樹脂成形基本ガイド|定義や樹脂の種類、加工法など | 株式会社タキオンワタナベ

コラム

樹脂成形基本ガイド|定義や樹脂の種類、加工法など

2025年7月10日

プラスチック製品がどのように作られているか疑問に思ったことはありませんか。樹脂成形は、身の回りにある多くの製品を生み出している重要な技術です。樹脂を熱で溶かして型に流し込み、冷やして固めることでさまざまな形の製品を作り出します。

 

本記事では、樹脂成形の基本的な仕組みから加工方法まで詳しく解説します。

 

樹脂成形とは

樹脂成形とは

ここでは樹脂成形の基本的な仕組みについて詳しく解説していきます。樹脂成形は身の回りにある多くの製品を生み出している重要な製造技術です。プラスチック材料を加熱して変形させ、冷却によって固める一連の工程を指します。製品の用途や形状に応じてさまざまな手法が開発されており、現代の製造業を支える基盤技術となっています。

 

定義

樹脂成形とは、プラスチック材料を加熱して軟らかくし、決められた形に成形する技術です。粉末状や粒状の樹脂材料を熱で溶かし、金型に流し込んだり押し込んだりして目的の形に変形させます。冷却によって樹脂が固まると、金型の形状が正確に再現された製品が完成します。

自動車部品から日用品まで幅広い分野で活用されており、現代の製造業において欠かせない基本的な加工技術です。成形条件や金型設計を細かく調整することで、高精度で均一な品質の製品を効率的に生産できます。

 

目的

樹脂成形の主な目的は、複雑な形状の製品を効率的に量産することです。一度金型を作成すれば、同じ形状の製品を短時間で連続生産できるため、大幅なコスト削減が実現できます。

手作業では困難な精密な形状や、内部が中空の構造も正確に再現可能です。また、軽量で丈夫な製品を作ることができ、従来の金属部品に比べて重量を大幅に削減できます。リサイクル可能な材料を使用することで、環境負荷の軽減にも貢献しています。さらに、着色や表面処理を同時に行うことで、後加工の工程を省略し、製造効率を向上させることも可能です。

 

樹脂の種類とは

樹脂の種類とは

樹脂は、大きく分けて天然由来のものと人工的に作られたものの2種類があります。それぞれ異なる特性を持ち、用途に応じて使い分けられています。現在の樹脂成形では、合成樹脂が主流となっており、さまざまな性能を備えた材料が開発されています。

ここでは、樹脂成形に使用される材料について詳しく見ていきましょう。

 

天然樹脂

天然樹脂は、植物や動物から採取される自然由来の材料です。

代表的なものには、木の樹液から作られる松脂や漆、天然ゴムなどがあります。動物性では膠やカゼインも樹脂の一種として使用されています。

天然樹脂は古くから塗料や接着剤として利用されてきた歴史があり、現在でも特殊な用途で活用。環境に優しい素材として注目されており、バイオプラスチックの原料としても研究が進んでいます。

ただし、品質が安定しにくく、大量生産には適さないという課題があります。加工性能も限定的で、現代の樹脂成形では補助的な役割にとどまっているのが課題です。

 

合成樹脂

合成樹脂は石油などを原料として人工的に製造される高分子化合物で、いわゆるプラスチックのことです。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の2つに大別されます。

熱可塑性樹脂は加熱すると軟らかくなり、冷却すると硬くなる性質を持ち、何度でも加工し直すことが可能です。ポリエチレンやポリプロピレンなどが代表例で、リサイクルしやすい特徴があります。

一方、熱硬化性樹脂は一度硬化すると再加熱しても軟らかくならず、優れた耐熱性と強度を発揮するのが特徴です。エポキシ樹脂やフェノール樹脂などがあり、電子部品や自動車部品に使用されています。合成樹脂は品質が安定しており、大量生産に適しています。

 

樹脂成形加工の種類とは樹脂成形加工の種類とは

それぞれの手法には特徴があり、製品の形状や用途、生産量に応じて適切な方法を選択することが重要です。加工方法を理解することで、目的に合った製造プロセスを選べるようになります。

ここでは代表的な樹脂成形の加工方法を紹介します。

 

ブロー成形

ブロー成形は中空構造の製品を効率的に製造できる成形技術として広く活用されています。容器類の製造に特化した手法で、軽量で割れにくい製品を安価に生産することが可能です。設備投資が比較的少なく済むため、中小企業でも導入しやすい特徴があります。

 

仕組み

ブロー成形は、加熱して軟らかくなった熱可塑性樹脂を金型に入れ、内部から空気を送り込んで膨張させる成形方法です。樹脂が金型の内壁に押し付けられることで、金型の形状が転写されます。エクストルージョンブローとインジェクションブローの2つの方式があり、製品の形状や生産量に応じて使い分けられています。

 

用途

ペットボトルや洗剤容器、自動車の燃料タンクなど、中空構造を持つ容器類の製造に主に使用されます。食品包装容器や化粧品ボトル、おもちゃなど日常生活で目にする多くの製品がブロー成形で作られています。

 

メリット

金型の構造が比較的単純で製作費用を抑えられ、準備工程が少なく済むため、製品を安価に製造できます。軽量で割れにくい容器を効率的に生産でき、大量生産にも対応可能です。ただし、肉厚の制御が難しく、精密な形状には向いていません。

 

射出成形

射出成形はプラスチック成形の中で最も普及している技術で、複雑な形状から精密部品まで幅広い製品に対応できます。高い品質と生産効率を両立できるため、大量生産には欠かせない手法です。自動車から電子機器までさまざまな分野で採用されている代表的な成形方法といえます。

 

仕組み

射出成形は、加熱して溶融した樹脂を高圧で金型に注入する最も一般的な成形方法です。射出装置で樹脂を溶かし、型締装置で固定された金型に射出します。溶かす、充填する、固めるという3つの基本工程を経て製品が完成し、約30〜50秒という短いサイクルで連続生産が可能です。

 

用途

自動車部品、電子機器のケース、日用品、おもちゃなど、複雑な形状を持つ製品の製造に幅広く使用されています。精密部品から大型部品まで対応でき、最も汎用性の高い成形方法としてさまざまな分野で活用されています。

 

メリット

金型の転写性が非常に高く、複雑で精密な形状も正確に再現することが可能です。短いサイクルタイムで大量生産でき、表面の美しさも十分に表現できるため、外装部品にも適しています。成形後の後加工が少なく、生産効率が優れています。

 

真空成形

真空成形は薄肉製品の製造に適した経済的な成形手法です。金型の構造が単純で製作費用を抑えられるため、包装容器や看板などの製造に重宝されています。少量多品種から大量生産まで柔軟に対応でき、短納期での製品供給が可能な点も大きな魅力です。

 

仕組み

真空成形は、樹脂のシートやフィルムを加熱して軟らかくし、金型に密着させて真空ポンプで空気を吸引する成形方法です。大気圧と真空の圧力差によって樹脂シートが金型に押し付けられ、形状が転写されます。金型は片面のみで済むため、型の製作費用を大幅に削減できます。

 

用途

食品トレイ、卵パック、電子部品の包装容器、看板などの製造に使用されています。薄肉で軽量な製品の生産に適しており、包装業界で特に多く採用されています。自動車の内装部品や浴槽なども真空成形で作られることがあります。

 

メリット

金型が片面だけで済むため製作費用が安く、少量多品種の生産から大量生産まで幅広く対応できます。設備投資が比較的少なく済み、短納期での生産が可能です。連続生産システムを構築すれば、高い生産効率を実現できます。

 

押出成形

押出成形は長尺製品の連続生産に特化した効率的な成形技術です。フィルムやパイプなど断面形状が一定の製品を大量に製造できます。金型の交換だけでさまざまな形状に対応でき、生産の切り替えが容易な点も優れた特徴として挙げられます。

 

仕組み

押出成形は、加熱して軟らかくした樹脂をダイと呼ばれる金型に加圧して通し、連続的に成形する方法です。スクリューの回転によって樹脂が前方に送られ、ダイの形状に合わせて成形されます。冷却後に所定の長さに切断して製品が完成します。金型を交換するだけで異なる形状の製品を作ることが可能です。

 

用途

フィルム、シート、パイプ、チューブ、電線の被覆材など、断面形状が一定の長尺製品の製造に使用されています。建材用の樋や窓枠、包装フィルムなど、日常生活に欠かせない多くの製品が押出成形で作られています。

 

メリット

連続生産が可能で生産効率が高く、大量生産に適しています。金型の交換が簡単で、さまざまな断面形状の製品を効率的に製造できるのがメリットです。設備の大規模な変更が不要で、製品の切り替えがスムーズに行えるため、柔軟な生産体制を構築できます。

 

圧縮成形

圧縮成形は高強度製品の製造に適した伝統的な成形手法です。熱硬化性樹脂の特性を活かし、耐熱性や機械的強度に優れた部品が製造可能。電気絶縁部品や自動車部品など、高い信頼性が要求される用途で長年にわたって活用されています。

 

仕組み

圧縮成形は、主に熱硬化性樹脂の成形に使用される方法で、加熱した金型に樹脂材料を入れて上下から圧力をかけて成形します。高い圧力によって樹脂の硬化が促進され、密度の高い製品が得られます。成形時間は射出成形より長くかかりますが、厚肉製品の成形に適しています。

 

用途

電気絶縁部品、自動車のブレーキパッド、食器類など、高い強度と耐熱性が要求される製品の製造に使用されています。特に熱硬化性樹脂の特性を活かした用途で多く採用されており、工業用部品の製造に欠かせない技術です。

 

メリット

高圧成形により高密度で頑丈な製品を作ることができ、厚肉製品の成形に適しています。比較的単純な設備で成形でき、金型の構造も簡単です。材料のロスが少なく、均一な品質の製品を安定して生産できます。ただし、成形時間が長く、大量生産には向いていません。

 

トランスファー成形

トランスファー成形は精密部品の製造に特化した高度な成形技術です。圧縮成形の利点を保ちながら量産性を向上させた手法で、電子部品などの小型で精密な製品に適しています。インサート成形にも対応でき、複合材料部品の製造において重要な役割を果たしています。

 

仕組み

トランスファー成形は、圧縮成形を改良した方法で、密封された金型に樹脂を注入しながら加圧して硬化させます。樹脂材料を別の容器で加熱溶融し、プランジャーによって金型に注入する構造です。金型の構造は複雑になりますが、より精密な成形が可能で、量産性も向上しています。

 

用途

インサート部品を含む電子部品、小型で精密な部品、自動車用センサー部品など、高い精度と耐久性が求められる製品の製造に使用されています。特に電子機器の小型部品や、金属インサート品の成形に適しています。

 

メリット

圧縮成形の高密度性と頑丈さを保ちながら、工程時間を短縮して量産性を高めています。精密な形状制御が可能で、インサート部品の埋め込みも正確に行えるのがメリットです。品質の安定性が高く、電子部品などの高信頼性が要求される分野に適しています。

 

樹脂成形で注意することとは

樹脂成形で注意することとは

樹脂成形を成功させるためには、事前の計画と準備が重要です。製品設計の段階から成形方法の特性を理解し、適切な条件設定を行う必要があります。

ここでは特に注意すべき重要なポイントについて説明します。

 

作れる形・作れない形を把握しておく

樹脂成形では、成形方法によって製造可能な形状に制限があります。射出成形では複雑な形状も可能ですが、アンダーカット部分には抜き勾配が必要で、極端に薄い部分は樹脂が充填されない可能性があります。

ブロー成形は中空形状に限定され、真空成形では深絞りに制限があります。また、急激な肉厚変化や鋭利な角部は成形不良の原因となりやすく、設計段階での配慮が必要です。

 

かかるコストを確認する

樹脂成形にかかるコストは、金型費、材料費、加工費の3つに大別されます。

金型費は初期投資として大きな割合を占めるため、生産予定数量との兼ね合いを慎重に検討する必要があります。射出成形の金型は高額ですが、大量生産により単価を下げることが可能です。

一方、真空成形は金型費が安い代わりに、材料費の割合が高くなります。生産数量と品質要求に応じて、最適な成形方法を選択することが重要です。

 

まとめ

樹脂成形は現代の製造業において不可欠な技術として、さまざまな製品の生産を支えています。天然樹脂から合成樹脂まで多様な材料があり、射出成形、ブロー成形、真空成形など、それぞれ異なる特徴を持つ加工方法が存在します。

製品の用途、形状、生産量に応じて最適な手法を選択することで、高品質で効率的な製造が実現可能です。事前の設計検討とコスト計算を十分に行い、適切な成形方法を選ぶことが大切です。

 

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