押出成形加工ガイド|加工の種類やメリット、加工工程など解説 | 株式会社タキオンワタナベ

コラム

押出成形加工ガイド|加工の種類やメリット、加工工程など解説

2025年6月19日

押出成形は溶かした樹脂をトコロテンのように押し出し、連続的に製品を作る成形方法です。パイプやシート、フィルムなど、同一断面形状の製品を大量生産できる技術として注目されています。

本記事では、押出成形加工について詳しく解説します。加工の種類からメリット・デメリット、具体的な工程まで分かりやすく説明します。

 

押出成形加工とは

押出成形加工とは

押出成形は熱可塑性樹脂を用いた代表的な加工方法のひとつで、材料を金型から連続的に押し出すことで製品を成形します。ここでは、定義から特徴、具体的な用途まで、押出成形の全体像を把握できるよう詳しく説明していきます。

 

樹脂の加工方法

押出成形は熱可塑性樹脂を加熱溶融させて、金型から押し出すことで連続的に成形する加工方法です。溶融した樹脂がトコロテンのように金型を通過して、一定の断面形状になります。

他の樹脂成形方法とは異なり、金型内部では樹脂を冷却せず、押し出されてから固化させる点が特徴です。材料となるペレットを押出機に投入し、スクリューで加熱混練したあと、ダイと呼ばれる金型から連続的に押し出します。

 

特徴

押出成形の大きな特徴は、成形品が連続的に生産されることです。金太郎飴のように、どの部分を切っても同じ断面形状になります。金型を変更するだけで様々な形状の製品を作れるため、汎用性が高い加工方法です。

また、長尺の製品でも小さな金型で製造できるメリットがあります。一方で、同一断面形状の製品しか作れないという制限もあります。生産効率が良く、大量生産に向いているため、コストパフォーマンスに優れた加工法として重要な位置を占めています。

 

加工用途

押出成形で製造される製品は多岐にわたります。日用品では、レジ袋やテープ、綿棒軸、食品容器、包装用フィルムなどが代表例です。建材分野では、給水管や排水管、床シート、樹脂サッシ、断熱材、壁紙などに活用されています。

電気製品では、コード被覆材や照明カバー、光学フィルム、電線被覆材の製造に欠かせません。自動車部品としては、シール材やワイパー部品、バンパーなどにも使用されています。

その他にも、ロープや釣り糸、農業用フィルムなど、様々な分野で利用されており、現代社会の基盤となる製品群を支えている重要な技術です。

 

押出成形加工の種類

押出成形加工の種類

ここでは押出成形加工の様々な種類について解説します。基本的な押出成形法から、複数の樹脂を組み合わせる共押出成形、金属との複合成形、発泡成形、フィルム専用のTダイ法、袋状製品のインフレーション法まで多彩な技術があります。

それぞれの特徴と用途を理解することで、目的に応じた最適な成形方法を選択できるようになります。

 

押出成形法

基本的な押出成形法では、シンプルな丸型や角型の製品を製造します。材料をスクリューで押し出し、ダイの形状に合わせて成形される方法です。丸棒や角材、板材などの基本的な形状の製品を作ることが可能です。

金型の設計次第で、複雑な異形断面も可能です。コの字型やヨの字型、日の字型などの特殊な形状も実現できるため、建材や電気部品など、用途に応じた多様な製品開発が行えます。

技術的にはシンプルですが、品質の安定性と生産効率の高さから、多くの製造現場で採用されている基本的な成形方法といえるでしょう。

 

共押出成形法

共押出成形は、2種類以上の異なる樹脂を個別のダイから同時に押し出す技術です。硬質材と軟質材、透明材と着色材、発泡材と硬質材など、様々な組み合わせが可能になります。

表面被覆タイプでは軟質材が硬質材を覆い、強度を保ちながら柔らかい触感を実現できます。サンドイッチタイプでは軟質材を硬質材で挟み、特定部位の柔軟性を確保します。

付け出しタイプでは硬質材から軟質材を突出させ、緩衝材の役割を持たせることが可能です。多層パイプや多層フィルム、高機能な医療用チューブなどの製造に活用され、単一素材では実現できない複合的な機能を持つ製品開発を可能にしています。

 

複合押出成形法

複合押出成形法は、金属などの異なる素材を樹脂と一体成形する技術です。異素材インサート押出成形法とも呼ばれています。金属をインサートした製品では、樹脂特有の温度や湿度変化による寸法変化を抑制でき、強度も大幅に向上します。

導電体となる金属製の芯材を樹脂で覆う加工では、電線や光ファイバーなどの線材製造に重要な役割を果たします。樹脂単体では得られない機械的特性や電気的特性を付与できるため、高機能部品の製造に欠かせない技術です。

製品設計の自由度が高く、コスト効率も良好であることから、今後の需要拡大が期待されている分野でもあります。

 

発砲押出成形法

発泡押出成形法は、押出機に投入する材料に化学発泡剤を混練し、発泡性を持った製品を成形する方法です。軽量化と断熱性能の向上を同時に実現できるため、木材の代替材料として注目されています。

土木建築分野での用途が多く、テラスやベンチなどのエクステリア材料として活用されています。発泡により内部に気泡構造を形成するため、重量に対する強度比が高く、耐食性にも優れています。加工後の表面処理も容易で、意匠性も向上できます。

環境負荷の軽減や資源の有効活用の観点からも、今後さらなる技術開発と応用展開が期待される成形法です。

 

Tダイ法

Tダイ法は、フィルムやシートなどの平板状製品に特化した成形方法です。T字型の特殊なダイを使用し、押し出された材料をマニホールドで扇形に広げ、リップでフィルム状に成形します。単層だけでなく、共押出しによる多層フィルムの製造も可能です。

ラミネート加工にも適用でき、包装材料や産業用フィルムの製造に重要な技術です。厚さの均一性と表面品質の向上に優れており、光学用途や精密機器の保護フィルムなど、高品質が要求される分野でも活用されています。

生産速度が速く、大量生産に適しているため、コスト競争力の高い製品開発を支える基盤技術となっています。

 

インフレーション法

インフレーション法は、袋状フィルムの成形に特化した技術です。専用のインフレーション成形機を使用し、材料をチューブ状に押し出してから内部に空気を吹き込みます。チューブが風船のように膨張する現象を利用し、ローラーで引っ張りながら空気を抜いて巻き取ります。

その後、ヒーターやカッターで所定の長さに切断し、片側を熱溶着で閉じることで袋状フィルムが完成します。ポリ袋やゴミ袋などの日用品から、農業用フィルムまで幅広い用途があります。

材料の使用効率が良く、継ぎ目のない一体成形が可能なため、強度と密封性に優れた製品を製造できる利点があります。

 

押出成形加工のメリット

押出成形加工のメリット

ここでは押出成形加工が持つ主要なメリットについて解説します。大量生産に適した連続製造プロセス、長尺製品の効率的な製造能力、同一断面形状製品の安定した品質管理など、押出成形ならではの利点があります。各メリットの詳細を理解することで、なぜ多くの製造業で採用されているかが明確になり、適用判断の参考になるでしょう。

 

大量生産に向いている

押出成形は連続的な生産プロセスのため、大量生産に非常に適しています。24時間連続運転が可能で、生産効率が極めて高いのが特徴です。射出成形のように一つずつ製品を作る方法と比較すると、時間あたりの生産量が格段に多くなります。

人件費や設備コストを製品あたりで計算した際のコストパフォーマンスも優秀です。安定した品質の製品を大量に供給できるため、市場での価格競争力も高まります。需要変動に対する対応力も高く、生産計画の調整が容易であることも大量生産における重要なメリットといえるでしょう。

 

長尺の製品を製造できる

押出成形では、理論的には無限の長さの製品を製造することが可能です。金型のサイズに制約されることなく、必要な長さの製品を連続的に生産できます。建材のパイプや電線、光ファイバーなど、長尺が要求される製品の製造には欠かせない技術です。

輸送や保管の都合で適切な長さに切断することはありますが、製造工程での長さ制限はほとんどありません。また、同一の金型を使用して異なる長さの製品を作り分けることも容易です。

在庫管理の効率化や顧客ニーズへの柔軟な対応が可能になるため、ビジネス上の大きなメリットとなっています。

 

同一断面形状の製品を安定して製造できる

押出成形は、同一断面形状の製品を極めて安定して製造できる技術です。金型の精度が高ければ、製品の寸法や形状のばらつきを最小限に抑えられます。連続生産により、製品間の品質格差も少なくなります。

品質管理の観点からも、検査工程の簡素化や不良率の低減が期待できます。製品の互換性が重要な部品製造においては、寸法精度の安定性は必須条件です。

また、生産条件を一度確立すれば、長期間にわたって同じ品質レベルを維持できるため、顧客からの信頼性も高まります。自動化との相性も良く、省人化による生産コストの削減も実現できる重要なメリットです。

 

押出成形加工のデメリット

押出成形加工のデメリット

ここでは押出成形加工のデメリットについて解説します。切断面処理の必要性、小ロット生産への不向き、寸法精度の限界など、技術的な制約があります。メリットだけでなくデメリットも正しく理解することで、他の成形方法との比較検討が可能になり、適切な製造方法の選択に役立ちます。実際の製品開発では両面を考慮した判断が重要です。

 

切断面の処理が必要である

押出成形では連続的に生産された製品を切断するため、切断面の処理が必要になります。切断時に発生するバリや変形を除去する後工程が不可欠です。特に精密部品や外観が重要な製品では、切断面の仕上げ品質が製品価値に直結します。

切断方法によっては熱影響で材料特性が変化することもあり、適切な切断条件の設定が重要です。また、切断くずの処理も考慮すべき要素です。これらの後工程は追加コストとなるため、製品設計時には切断面処理の難易度を考慮した検討が必要になります。

自動化による効率化も可能ですが、初期投資や設備保守の負担は避けられません。

 

小ロット生産には向かない

押出成形は設備の立ち上げや金型の準備に時間とコストがかかるため、小ロット生産には適していません。材料の変更や金型の交換には、設備の停止と清掃、条件設定の調整が必要です。

少量多品種の生産では、段取り替えの頻度が高くなり、稼働効率が大幅に低下します。また、最低限の生産量を確保しないと、コスト面でのメリットが得られません。

プロトタイプや試作品の製造には、より柔軟性の高い他の成形方法が適している場合が多いでしょう。市場テストや限定商品の製造においても、押出成形の採用は慎重に検討する必要があります。

 

寸法の精度を上げにくい

押出成形では、他の成形方法と比較して寸法精度を高くすることが困難です。溶融樹脂の温度変化や冷却条件の影響により、寸法にばらつきが生じやすい特性があります。

特に肉厚の制御や外径の精度管理は技術的な課題となります。冷却過程での収縮により、設計寸法からのずれが発生することも珍しくありません。高精度が要求される部品では、後加工による寸法調整が必要になる場合もあります。

品質管理においても、連続生産中の寸法監視と調整が重要になります。精密部品の製造には、射出成形などのより精度の高い成形方法を検討することが一般的です。

 

押出成形加工の工程

押出成形加工の工程

ここでは押出成形加工の具体的な工程について解説します。材料投入から押し出し、冷却、引き取り、切断まで、5つの主要工程で構成されています。

各工程の役割と重要なポイントを理解することで、品質管理や生産効率向上に必要な知識が身につきます。実際の製造現場での応用にも役立つ実践的な内容を詳しく説明していきます。

 

材料を入れる

押出成形の最初の工程では、プラスチックペレットをホッパーから押出機に投入します。ペレットは1~5mm程度の粒状に加工された樹脂材料で、単一樹脂または複数樹脂の混合物です。

フィラーやマスターバッチなどの添加剤が含まれる場合もあります。投入されたペレットはシリンダ内で加熱されながらスクリューによって切り刻まれ、溶融状態になります。加熱温度は樹脂の種類によって調整され、均一な溶融状態を保つことが重要です。

スクリューの回転により材料は前方に送られ、同時に混練効果によって組成の均一化も図られます。材料の品質や投入タイミングの管理は、最終製品の品質に大きく影響する重要な工程です。

 

押し出す

溶融した樹脂はスクリューによってダイスへと押し出されます。ダイスは製品の断面形状を決定する重要な部品で、精密な加工と定期的なメンテナンスが必要です。ダイスを通過する際に、溶融樹脂は所定の形状に成形されます。

押し出し圧力や温度の制御は製品品質に直結するため、厳密な管理が求められます。ダイスの表面に樹脂カスが付着すると製品表面に筋が発生するため、常に清浄な状態を保つ必要があります。

また、ダイスの変形やひずみは寸法精度の低下を招くため、定期的な点検と調整が欠かせません。押し出し速度と樹脂の流動性のバランスも、品質安定化の重要な要素となります。

 

冷やす

ダイスから押し出された成形品は、サイジングダイによって形状を保持されながら冷却水槽で冷却されます。急激な冷却は製品にひずみを生じさせるため、時間をかけた緩やかな冷却が重要です。

冷却条件は樹脂の種類や製品の肉厚によって調整する必要があります。水温や冷却時間の管理により、製品の寸法安定性や機械的特性が決まります。冷却ムラは製品の反りや変形の原因となるため、均一な冷却環境の維持が求められます。

また、冷却過程での収縮を考慮した温度プロファイルの設定も重要な技術要素です。適切な冷却により、最終製品の品質と生産効率の両立が実現できます。

 

引き取る

固化した成形品は引取機によって引っ張り出され、次の工程へと運ばれます。引き取り速度の調整により、製品に適度な張力を加えられます。押し出し方向と逆向きの圧力を意図的に加えることで、冷却時の収縮やボイドの発生を抑制する効果があります。

製品を長手方向に圧縮することで、短手方向の収縮を防ぎ、寸法安定性を向上させます。引き取り条件は製品の最終特性に影響するため、樹脂の特性や製品仕様に応じた最適化が必要です。

シートやフィルムの場合には、引き取り後に巻取り機でロール状に加工されます。連続生産の要となる工程であり、安定した引き取り条件の維持が生産性向上の鍵となります。

 

切断する

連続的に生産された成形品を所定の長さで切断し、製品として仕上げます。切断方法は製品の材質や要求品質によって選択され、機械的切断や熱切断などがあります。

切断面の品質は製品価値に直結するため、バリや変形の発生を最小限に抑える技術が重要です。切断タイミングの精度は製品の長さ精度に影響するため、高精度な制御システムが必要になります。

場合によっては穴あけや切り欠きなどの後加工、端部処理も実施されます。切断くずの処理やリサイクルも考慮すべき要素です。自動化による効率化が進んでおり、品質の向上と生産性の両立が図られています。

 

押出成形以外の樹脂加工法

押出成形以外の樹脂加工法

ここでは押出成形以外の主要な樹脂加工法について解説します。射出成形とブロー成形という代表的な技術を取り上げ、押出成形との違いや特徴を比較します。

各成形方法の適用分野や技術的特徴を理解することで、製品開発時に適切な加工法を選択できるようになります。樹脂加工技術全体の体系的な知識を身につけられるでしょう。

 

射出成型

射出成形は、溶融した樹脂を金型内に高圧で射出し、冷却固化させて製品を作る方法です。押出成形とは異なり、三次元形状の複雑な製品を高精度で製造できる特徴があります。

金型内で樹脂を冷却するため、寸法精度が高く、細かいディテールも再現可能です。短時間での大量生産が可能で、家電製品のケースやボタン、自動車部品のバンパーやダッシュボード、医療機器のシリンジなど幅広い用途に活用されています。

金型コストは高いものの、複雑形状の一体成形により後加工を削減できるメリットがあります。多様なプラスチック材料に対応でき、現代製造業の基盤技術です。

 

ブロー成型

ブロー成形は中空成形とも呼ばれ、中空の製品を製造する技術です。溶融樹脂をパイプ状に押し出してパリソンを形成し、金型で挟んでから内部に圧縮空気を吹き込みます。

空気圧により樹脂が金型内面に押し付けられ、冷却固化することで中空製品が完成します。ペットボトルやジュースボトルなどの飲料容器、洗剤ボトルやシャンプーボトルなどの家庭用品、燃料タンクやドラム缶などの工業製品に広く利用されています。

開口部の小さい複雑な中空形状も製造でき、軽量で強度の高い製品を効率的に生産できます。リサイクル性にも優れ、環境負荷の軽減にも貢献している成形方法です。

 

まとめ

押出成形加工は、溶融樹脂を連続的に押し出して製品を作る効率的な成形方法です。同一断面形状の製品を大量生産でき、コストパフォーマンスに優れています。

共押出成形や発泡押出成形など多様な技術により、高機能製品の開発も可能になっています。日用品から工業製品まで幅広い用途があり、現代社会の基盤を支える重要な技術として今後も発展が期待されます。

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