プレス金型とは?必要な理由や種類、金型を用いる加工など紹介 | 株式会社タキオンワタナベ

コラム

プレス金型とは?必要な理由や種類、金型を用いる加工など紹介

2025年6月12日

プレス金型は金属やプラスチック材料を高精度で成形し、品質・納期・コストの三要素を高水準で実現する不可欠な存在です。自動車部品から電子機器、家電製品まで幅広い分野で活用されており、現代の工業製品製造には欠かせません。

本記事では、製造業において大量生産を支える重要な工具であるプレス金型について詳しく解説します。

 

プレス金型とは

プレス金型とは

プレス金型は製造業の根幹を支える重要な工具で、金属やプラスチック材料を所定の形状に成形するために使用されます。高い圧力をかけることで材料を塑性変形させ、精密で一貫した品質の製品を大量生産することが可能です。自動車部品から家電製品まで、身の回りの多くの製品がプレス金型によって製造されています。

 

定義

プレス金型とは、金属やプラスチックなどの加工物をプレス機械にセットし、高い圧力をかけて特定の形状に成形するための特殊な工具です。上型(パンチ)と下型(ダイ)で構成され、材料を挟み込むことで切断・曲げ・絞りなどの加工を行います。一度金型を製作すれば、同じ形状の製品を高精度かつ効率的に大量生産できるため、製造業において欠かせない存在となっています。

 

プラスチック用金型との違い

プレス金型とプラスチック用金型の主な違いは、加工する材料と成形方法にあります。プレス金型は主に金属板材を対象とし、圧力による塑性変形を利用して成形します。

一方、プラスチック用金型は合成樹脂を溶融状態で型に注入し、冷却固化させる射出成形が一般的です。また、プレス金型は高い圧力に耐える必要があるため、より高強度な材料で製作されています。加工温度についても、プレス金型は常温での加工が多いのに対し、プラスチック用金型は高温での成形が基本となります。

 

鋳造型との違い

プレス金型と鋳造型では、材料の成形プロセスが根本的に異なります。プレス金型は固体状態の金属板に圧力を加えて塑性変形させる加工方法です。これに対し、鋳造型は金属を高温で溶融し、液体状態で型に流し込んで冷却固化させます。プレス金型では材料の無駄が少なく、精密な寸法精度を得やすい特徴があります。

また、プレス加工は連続生産に適している一方、鋳造は複雑な内部構造を持つ部品の製造に向いています。生産性の面では、プレス金型の方が高速生産に適しているといえるでしょう。

 

ダイカスト型との違い

ダイカスト型は鋳造型の一種ですが、プレス金型とは成形原理が大きく異なります。ダイカスト型では、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの非鉄金属を溶融状態で高圧により金型に注入します。

プレス金型が固体材料の塑性変形を利用するのに対し、ダイカスト型は液体金属の凝固を利用した成形方法です。精度面では、プレス金型の方が高い寸法精度を実現できます。また、プレス金型は薄肉製品の製造に適している一方、ダイカスト型は肉厚のある複雑形状部品の製造に向いています。

 

プレス金型が必要な理由

プレス金型が必要な理由

製造業において品質・納期・コストの三要素を高水準で達成するため、プレス金型は欠かせない存在です。手作業では実現困難な精密さと一貫性を持ち、大量生産における効率性とコスト削減を両立させます。現代の工業製品の多くが、プレス金型なしには成り立たない状況といえるでしょう。

品質面では、金型を使用することで製品の形状や寸法の一貫性が保たれ、安定した高品質な製品を大量生産できます。納期については、自動化された生産プロセスにより短時間での大量生産が可能となり、確実な納期遵守を実現します。

コスト面では、初期投資は必要ですが、一度製作した金型で長期間にわたって同一製品を低コストで製造できるため、製品単価の大幅な削減が可能です。

 

プレス金型の種類とは

プレス金型の種類とは

プレス金型には、生産量や製品特性に応じて選択される複数のタイプが存在します。単発型・トランスファー型・順送型の三種類が主流で、それぞれ異なる特徴と用途を持っています。適切な金型選択により、効率的な生産体制を構築し、コストパフォーマンスの向上を実現できます。

 

単発型

単発型は、一つの工程で一つの作業を行うシンプルなプレス金型です。曲げ加工や絞り加工など、単一工程のみを実行する設計となっています。製作コストが比較的安価で初期投資を抑えられ、オペレーターによる手動調整が可能なため、大型製品の少量ロット生産に適しています。

一方で、人の手による作業が必要となるため生産性は低く、オペレーターの熟練度が製品精度に影響を与える可能性があります。複数台のプレス機械をタンデムラインに配置することで自動化を図る「タンデム加工」も行われています。

 

トランスファー型

トランスファー型は、プロセスごとに複数の単発型プレス金型を並べ、加工物を自動搬送装置によって次の金型へと送り、連続的に加工するタイプです。単発型と同様の金型を使用しながら、自動化により生産効率を向上させています。複雑な形状の製品加工や多段階加工を同一ラインで一貫して行える利点があり、材料の歩留まりも良好です。

ただし、複数の金型と自動搬送装置が必要となるため初期コストが高く、設計の難易度も高いという課題があります。順送型ほどではありませんが、大量生産にも対応可能です。

 

順送型

順送型は、一つのプレス金型で曲げ加工・せん断・絞り加工など複数の加工工程を連続して行えるタイプで、「プログレ」とも呼ばれます。ロール状のコイル材を使用し、材料をセットした後に順次プレス加工を施して完成品を製造する仕組みです。

最大の利点は生産性の高さで、一度に複数の加工を行えるため短時間での大量生産が可能です。完全に自動化されており、人手による材料セットも不要です。ただし、金型が複雑で製造コストが高く、一度製作すると加工パターンや寸法の調整が困難になるという制約があります。

 

プレス金型に使われる主な部品とは

プレス金型に使われる主な部品とは

プレス金型は複数の精密部品から構成されており、各部品が重要な役割を担っています。パンチ・プレート・ダイ・ガイドポストなどの主要部品が連携することで、高精度な製品製造を実現します。部品の品質と精度が金型全体の性能を左右するため、適切な材料選択と加工技術が求められます。

 

パンチ

パンチは、金属板の切断・打抜き・曲げの役割を担う重要な部品で、「ポンチ」や「雄型」とも呼ばれます。ダイと組み合わせて使用し、工作物に直接接触して成形を行います。パンチの形状と精度は製品の品質に直接影響するため、高い加工精度が要求されます。

材料には耐摩耗性と高硬度を併せ持つ工具鋼が使用され、用途に応じて熱処理が施されます。パンチの位置精度を保つため、パンチプレートによって確実に固定される構造となっています。長期使用による摩耗や欠けに対しては、定期的なメンテナンスや交換が必要です。

 

プレート

プレス金型には複数のプレートが使用されており、それぞれ重要な役割を果たしています。パンチプレートはパンチを固定し位置決めを行い、ダイプレートはダイの安定性を確保します。ストリッパプレートは打ち抜かれた工作物をパンチから引きはがし、材料の変形を抑制する機能があります。

バッキングプレートは高い加圧に耐えるため熱処理が施され、パンチの過度なのめり込みを防止します。各プレートは高精度で製作され、金型全体の剛性と精度を維持する重要な構成要素となっています。適切な材料選択と加工により、長期間の安定した性能を実現しています。

 

ダイ

ダイは、パンチと対をなす部品で「雌型」や「パンチの受け」とも呼ばれ、押し出された工作物を受け止める役割を担います。パンチとダイの位置関係の精度は製品品質に直結するため、極めて高い寸法精度が要求されます。ダイの形状は製品の外形を決定するため、設計段階から慎重な検討が必要です。

材料には高硬度と耐摩耗性を持つ工具鋼が使用され、長期使用に耐える耐久性が確保されています。ダイプレートと一体化したタイプから入れ子式まで、用途に応じて様々な構造が採用されており、メンテナンス性も考慮した設計が重要です。

 

ガイドポスト

ガイドポストは、プレス機械に金型を固定する際の芯合わせに欠かせない部品です。上下のダイセットを正確にはめ合わせることで、金型全体の位置精度を確保し、高品質な製品製造を実現します。ガイドポストがなければ、上型と下型の位置がずれて製品不良や金型損傷の原因となります。

高い真直度と表面精度が要求され、長期使用に耐える耐摩耗性も必要です。潤滑機構を備えたタイプもあり、スムーズな金型動作を支援します。ガイドポストの精度と耐久性は、プレス金型の性能と寿命に大きく影響するため、品質の高い製品選択が重要となります。

 

プレス金型を用いた加工方法とは

プレス金型を用いた加工方法とは

プレス金型による加工方法は多岐にわたり、それぞれが特定の目的と特徴を持っています。プレス加工・曲げ加工・絞り加工・せん断加工・ファインブランキング加工など、用途に応じた加工方法を組み合わせることで、複雑な形状の製品も効率的に製造できます。各加工法の特性を理解することが重要です。

 

プレス加工

プレス加工は、プレス機にセットした金型によって材料に成形荷重を加え、製品を寸法通りに変形させる加工技術です。すべての製品を同じ品質に仕上げながら、大量かつ安価で短時間での量産を実現します。加工の基本原理は、上型(パンチ)と下型(ダイ)で材料を挟み込み、高い圧力をかけることで塑性変形させることです。

成形・切断・曲げ・絞りなど、様々な加工を組み合わせることで複雑な形状の製品も製造可能です。自動化により人件費を削減でき、高い寸法精度と表面品質を安定して得られるため、製造業において広く採用されています。

 

曲げ加工

曲げ加工は、材料に引張り力と圧縮力を作用させることで、所定の角度に曲げる加工方法です。V曲げ・L曲げ・U曲げ・カール曲げ・ヘミング曲げ・ロール曲げなど、金型や機械の種類によって多様な曲げ形状に対応できます。身近な製品では、ホチキスの芯やクリップなどが曲げ加工によって製造されています。

加工時には材料の板厚や機械的性質を考慮し、適切な曲げ半径とクリアランスを設定することが重要です。スプリングバックと呼ばれる弾性回復現象を見込んだ金型設計により、精密な角度精度を実現しています。高速で連続的な曲げ加工が可能なため、大量生産に適しています。

 

絞り加工

絞り加工は、一枚の平板材料から底付きの容器状製品を製造する加工方法です。パンチ(雄型)とダイ(雌型)の形状に沿って材料を引き伸ばし、継ぎ目のない一体成形を実現します。自動車のボディパネル、家電製品の筐体、流し台など、幅広い製品に応用されています。

加工時には材料の流動性を考慮し、適切なブランクホルダー力と潤滑条件を設定することが重要です。深絞り加工では、しわや破断を防ぐため段階的な成形を行う場合もあります。金型設計では、材料の伸び特性や加工限界を十分に検討し、安定した品質の製品を製造するための工夫が必要です。

 

せん断加工

せん断加工は、材料に外力を加えて完全に切断・分離する加工方法です。単純な切断だけでなく、切り抜き・外形抜き・穴あけなど、様々な形状の除去加工が可能です。クッキーの型抜きのように、必要な形状を打ち抜く「抜き加工」も、せん断加工の代表例といえます。

加工精度を向上させるため、パンチとダイのクリアランス(隙間)を適切に設定することが重要です。先に不要部分を除去しておくことで、後工程での無駄な加工を削減でき、全体的な生産効率向上に貢献します。高速での連続加工が可能なため、大量生産における基本的な加工方法として広く活用されています。

 

ファインブランキング加工

ファインブランキング加工は、パンチとダイのクリアランスを極限まで小さくし、上下両方向から加圧して打ち抜く高精度せん断加工です。静水圧効果により金属の塑性変形能力を向上させ、専用機械を使用して実施されます。一般的なプレス加工では困難なマイクロメートル単位での精密加工が可能で、平滑なせん断面と優れた平坦度を実現します。

複雑形状の成形にも対応でき、特殊鋼やステンレス鋼、超合金などの難加工材の加工も可能です。自動車部品や精密機器部品など、高い寸法精度と表面品質が要求される分野で重要な加工技術として位置づけられています。後加工を省略できるため、トータルコストの削減にも貢献しています。

 

プレス金型で加工可能な素材とは

プレス金型で加工可能な素材とは

プレス金型による加工では、鋼板から非鉄金属まで幅広い材料に対応可能です。各材料は独自の特性を持ち、用途や要求性能に応じて選択されます。材料の機械的性質や加工特性を十分に理解し、適切な金型設計と加工条件を設定することで、高品質な製品製造を実現できます。

 

鋼板

プレス加工で最も多く使用される材料が鋼板です。自動車や電子部品に広く使われるSPH(熱間圧延鋼板)やSAPH(熱間圧延酸洗鋼板)などの一般構造用鋼板が代表的です。これらの材料は成形性に優れ、比較的安価で入手しやすいという利点があります。

また、機械構造用合金鋼は高強度が要求される部品に使用され、ステンレス鋼は耐食性が必要な用途に適用されます。冷間圧延鋼板は表面品質が良好で、塗装や表面処理を施す製品に適しています。それぞれの鋼板は機械的性質や加工特性が異なるため、製品要求に応じた適切な材料選択が重要となります。

 

非鉄

非鉄金属は、軽量化や特殊機能が要求される製品に使用されます。アルミニウムは軽量で耐食性に優れ、自動車部品やモバイル機器の筐体に広く採用されています。銅は導電性・熱伝導性に優れるため、電気・電子部品の製造に不可欠です。チタンは高強度・軽量・耐食性を兼ね備え、航空宇宙分野や医療機器に使用されています。

マグネシウムは実用金属中最軽量で、自動車の軽量化部品として注目されています。これらの非鉄金属は鋼材と比較して加工特性が異なるため、材料に適した金型設計と加工条件の設定が必要です。特に延性や加工硬化特性を考慮した慎重な加工が求められます。

 

まとめ

プレス金型は、現代の製造業において高品質な製品を効率的に大量生産するための重要な工具です。単発型・トランスファー型・順送型など、用途に応じた金型選択により、コストと品質のバランスを取った生産が可能になります。

パンチ・ダイ・各種プレートなどの構成部品は、それぞれが重要な役割を果たしており、高精度な製品製造を支えています。せん断・曲げ・絞りなどの多様な加工方法を組み合わせることで、複雑な形状の製品も効率的に製造できます。

鋼板から非鉄金属まで幅広い材料に対応可能なプレス金型は、今後も製造業の発展に欠かせない技術として、さらなる進化が期待されています。

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