ジュラコン・POMの加工方法|特徴や用途、加工の注意点も紹介 | 株式会社タキオンワタナベ

コラム

ジュラコン・POMの加工方法|特徴や用途、加工の注意点も紹介

2025年5月29日

金属から樹脂への材料転換を検討する際、POM(ポリオキシメチレン)、通称ジュラコンは多くの現場で注目されている素材です。軽量でありながら優れた機械的特性を持ち、幅広い産業分野で活用されています。

この記事では、ジュラコン・POMの基本情報から加工方法、特徴や用途、そして加工時の注意点までを解説します。

 

ジュラコン(POM)とは

ジュラコン(POM)とは

エンジニアリングプラスチックの代表格として知られるPOM(ジュラコン)は、金属の代替材料として工業分野で広く活用されています。その特性や用途を理解することで、製品設計や材料選定の幅が広がるでしょう。ここでは、POM・ジュラコンの基本的な定義から特徴、活用されている分野までを詳しく見ていきます。

 

定義

POMはポリオキシメチレンの略称で、一般的にはポリアセタールとも呼ばれるエンジニアリングプラスチックの一種です。ジュラコンはPOMのコポリマータイプの商標名で、ポリプラスチックス株式会社の登録商標となっています。

POMには、ホモポリマー(一種類のモノマーから作られる)とコポリマー(二種類以上のモノマーから作られる)があり、ジュラコンはコポリマーの代表格として知られています。

1950年代に開発されて以来、その優れた特性から工業部品の素材として広く普及してきました。

 

特徴

POM・ジュラコンは熱可塑性プラスチックの中でも特に耐摩耗性と摺動性に優れています。自己潤滑性があるため、金属との摩擦係数が低く、機械要素部品に適した材料です。

また、寸法安定性が高く、切削加工時にバリが出にくいという加工上の利点もあります。耐疲労性や耐クリープ性にも優れており、連続使用温度は約100℃と耐熱性も良好です。

吸水性が小さく、電気絶縁性も良好という特性から、様々な環境下での使用が可能です。通常グレードは白色と黒色があり、低歪みの「スーパー」グレードも存在します。

 

用途

優れた機械的特性と摺動性から、POM・ジュラコンはベアリングや軸受け、歯車、スプリング、ビスなどの機械要素部品に広く使用されています。産業機械部品や半導体製造装置部品、電子機器部品など、金属の代替材料として幅広く採用されています。

 

身近なものでは、ブラシの柄や室内の扉・ふすまの戸車にも使用されることがあります。自動車部品や医療機器、食品製造装置の部品としても利用されており、私たちの生活を影で支える重要な素材です。

 

重要性

POM・ジュラコンは現代の製造業において欠かせない素材といえるでしょう。

金属と比較して軽量でありながら、優れた機械的特性を持つため、製品の軽量化や生産効率の向上に貢献します。

特にエンジニアリングプラスチックの中では比較的低コストで入手できるため、コスト削減と性能向上を両立させたい場面で重宝されています。

また、加工のしやすさから試作から量産まで幅広く対応でき、製品開発のスピードアップにも寄与します。環境面では、金属製品と比較して製造時のエネルギー消費が少なく、リサイクル性にも優れており、持続可能な製造への移行にも貢献する重要な素材です。

 

ジュラコン(POM)加工のメリット

ジュラコン(POM)加工のメリット

POM・ジュラコンは多くの優れた性質を持つことから、さまざまな産業で重宝されています。特に機械的性質と加工性のバランスが良く、金属から樹脂への材料転換を考える際の有力候補となります。ここでは、POM・ジュラコンが持つ主要なメリットについて詳しく解説します。

 

疲労しにくい

POM・ジュラコンは高い疲労抵抗性を持ち、繰り返し荷重がかかる環境でも変形や破損が起こりにくい特性があります。

クリープ特性も高く、長時間荷重がかかり続ける状況でも寸法変化が少ないため、精密部品や機械要素部品として信頼性の高い素材です。

この特性により、バネ材や機械的ストレスがかかる部品に適しており、長期間安定した性能を維持できます。特に振動や繰り返し動作が必要な機械部品において、金属部品の代替材料として高い評価を得ています。

 

寸法安定性が高い

POM・ジュラコンは吸水性が非常に小さいため、湿度変化による寸法変化がほとんど発生しません。切削加工後の変形も少なく、精密部品の材料として適しています。

特に「スーパー」グレードは切削加工時の寸法変化や形状変化が通常グレードの1/4以下と言われており、高精度が要求される部品に最適です。

この高い寸法安定性により、精密さが求められる機械部品や測定器具の部品など、正確な寸法が必要な用途で重宝されています。

 

絶縁性が高い

POM・ジュラコンは優れた電気絶縁性を持ち、電気機器の部品として適した素材です。

導電性を持つ金属とは異なり、電流を通さない特性があるため、電子機器の絶縁部品やコネクタなどに使用されます。

また、静電気の発生が少ない特性もあり、静電気に敏感な電子部品を扱う環境での部品材料としても適しています。この絶縁性と機械的強度の両立が、電気・電子機器分野での採用を広げている理由の一つです。

 

ジュラコン(POM)加工のデメリット

ジュラコン(POM)加工のデメリット

どんな優れた素材にも一長一短があるように、POM・ジュラコンにもいくつかの制約や注意点があります。材料選定の際には、これらのデメリットも理解した上で判断することが重要です。使用環境や要求性能に応じて、適切な材料選択ができるよう、代表的なデメリットを解説します。

 

接着加工に向かない

POM・ジュラコンは表面の潤滑性が良いという特徴がありますが、これが逆に接着剤との相性を悪くしています。一般的な接着剤では十分な接着強度が得られないため、部品同士を接着する加工には不向きです。

どうしても接着が必要な場合は、表面処理を行うか、溶接または超音波接着などの特殊な方法を採用する必要があります。この特性は、複数のパーツを組み合わせる際の設計上の制約となることがあります。

 

酸に弱い

POM・ジュラコンは有機溶剤やアルカリには強い耐性を示しますが、酸に対しては弱いという弱点があります。強酸に触れると分解や劣化が進むため、酸性の液体や蒸気が存在する環境での使用には適していません。

このため、化学プラントや酸を扱う工程での使用には注意が必要です。用途に応じて、酸との接触がある場合は他の耐酸性に優れた樹脂を選ぶことが推奨されます。

 

耐候性が低い

POM・ジュラコンは紫外線や光に長時間さらされると変色や劣化が進むため、屋外での使用には不向きです。耐候性が低く、太陽光に直接さらされる環境では材質の劣化が早まり、強度や外観に影響が出ることがあります。

屋外で使用する場合は、紫外線遮断処理された特殊グレードを選ぶか、保護カバーで覆うなどの対策が必要です。また、燃えやすい性質もあるため、火気のある場所での使用も避けるべきです。

 

ジュラコン(POM)の加工方法

ジュラコン(POM)の加工方法

POM・ジュラコンは優れた加工性を持ち、様々な方法で形状を作り出すことができます。用途や生産数量、求められる精度によって最適な加工方法が異なります。ここでは、POM・ジュラコンの代表的な加工方法とそれぞれの特徴について詳しく説明します。

 

マシニング加工

マシニング加工はPOM・ジュラコンの代表的な加工方法の一つで、主に板材やブロック材を使用します。

コンピュータ制御の工作機械(マシニングセンタ)を使い、材料を固定して工具を動かしながら削り出していきます。マシニング加工では、製品の図面をもとにNCデータを用意し、工具の動き方や加工条件を設定します。

POM・ジュラコンはバリが出にくく加工性が良いため、複雑な形状の部品も精度良く製作できます。自動工具交換装置を活用することで、様々な加工を連続して行うことが可能です。

 

切削加工

切削加工とは、工具を使って材料を削り取りながら目的の形状に成形する加工方法です。

POM・ジュラコンは「快削材」とも呼ばれるほど切削性に優れ、精密な切削加工に適しています。旋盤加工では丸棒材料を回転させながら工具を当て、外径や内径を削り出していきます。

切削だけでも光沢が出て美しい仕上がりになるのもPOM・ジュラコンの特徴です。切削加工は金型が不要なため、1個からでも低コストで精密部品を製作できる利点があります。

 

成形加工

成形加工(射出成形)は、POM・ジュラコンのペレット状の材料を熱で溶かし、金型に注入して冷却固化させる方法です。

大量生産に適した加工方法で、複雑な形状でも高速に製造できます。成形加工では、まず金型を射出成形機にセットし、ホッパと呼ばれるタンクにペレットを入れます。

材料が加熱・溶融され、高圧で金型内に射出され、冷却後に成形品を取り出します。量産時のコスト削減や材料のロスが少ないという利点がありますが、金型製作の初期コストがかかります。

 

ジュラコン(POM)の加工の注意点

ジュラコン(POM)の加工の注意点

POM・ジュラコンは加工性に優れた素材ですが、最良の結果を得るためにはいくつかの注意点があります。適切な加工条件や環境を整えることで、高品質な部品を効率よく製造することができます。ここでは、POM・ジュラコン加工時の主要な注意点について詳しく解説します。

 

切削条件を選ぶ

POM・ジュラコンを切削加工する際は、適切な切削条件の選定が重要です。

切削速度や送り速度が不適切だと、熱による変形や寸法精度の低下を招くことがあります。一般的に、高速切削と適度な送り速度が良好な仕上がりを得るポイントです。

また、工具の選択も重要で、鋭利な刃先を持つ工具を使用することで、切削抵抗を減らし、熱の発生を抑えることができます。寸法精度が特に重要な場合は、「スーパー」グレードを選ぶことで加工後の変形を最小限に抑えられます。

 

火気がある場所での加工は避ける

POM・ジュラコンは燃えやすい特性があるため、加工時には火気に注意が必要です。特に高速切削時に発生する切削熱や切り屑が発火源となることがあります。加工場所には十分な消火設備を用意し、切り屑はこまめに除去するようにしましょう。

また、加工機周辺に可燃物を置かないことも重要です。火災リスクを考慮し、無人での長時間加工は避け、常に監視できる環境で作業を行いましょう。

 

適切な冷却液を選ぶ

POM・ジュラコンの切削加工時には、適切な冷却液の使用が仕上がり品質に大きく影響します。水溶性の冷却液が一般的ですが、材料の特性や加工条件に合わせて選定することが重要です。

冷却液は切削熱の除去だけでなく、切り屑の排出や工具の寿命延長にも効果があります。ただし、冷却液がPOM・ジュラコンに与える化学的影響も考慮する必要があり、特に長時間接触する場合は材質に適合した冷却液を選ぶことが大切です。

 

適切な仕上げ加工を行う

POM・ジュラコンは切削だけでも良好な表面仕上がりが得られますが、用途によっては追加の仕上げ加工が必要な場合があります。バリ取りや面取りは製品の品質と安全性を高めるために重要です。また、表面粗さが要求される場合は、適切な研磨工程を加えることで対応できます。

ただし、POM・ジュラコンは塗装が困難なため、色の変更や装飾は難しいという制約があります。製品設計段階から仕上げについても考慮し、適切な加工方法を選定することが重要です。

 

まとめ

POM・ジュラコンは優れた機械的特性と加工性を持つエンジニアリングプラスチックとして、様々な産業分野で活用されています。耐摩耗性や摺動性に優れ、寸法安定性が高いことから、精密機械部品に適した材料です。

加工方法としては、マシニング加工、切削加工、成形加工があり、それぞれの特性を理解して適切な方法を選ぶことが重要です。一方で、接着加工に向かない、酸に弱い、耐候性が低いといった制約もあるため、用途に応じた適切な判断が求められます。

金属部品からの転換を検討する際は、これらの特性を理解し、適切な加工方法と注意点を踏まえることで、コスト削減や性能向上といった効果を最大限に引き出せるでしょう。

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